ストレスチェック・小規模事業場の労務管理
50人未満の事業場もストレスチェックが義務化|2028年4月に向けて何を準備する?

2028年4月1日から、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務付けられます。これまで努力義務だった小規模事業場では、初めて制度を導入する場合もあります。
ストレスチェックは、働く人が自身のストレス状態に気付き、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。初めて導入する事業場では、検査の依頼先を決めるだけでは足りません。誰に受検を案内し、個人結果をどう守り、面接指導の申出をどこで受けるか。従業員が安心して受けられるよう、検査の前後を含めた運用を考える必要があります。
義務化の対象は「会社」ではなく「事業場」で考える
まず、自社のどの拠点が対象になるかを確認します。人数は会社全体で一括して考えるのではなく、店舗、支店、事務所などの事業場ごとに確認します。複数の拠点がある会社なら、各拠点に誰が勤務しているかを把握するところから始まります。
受検する労働者の範囲も、正社員かパートかという呼び名だけでは決められません。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでは、期間の定めがない、または一年以上の雇用が予定されていることと、週の所定労働時間が通常の労働者の四分の三以上であることを基準としています。雇用期間の要件を満たす人で、週の所定労働時間が通常の労働者のおおむね二分の一以上なら、四分の三に満たなくても実施が望ましいとされています。派遣労働者がいる場合は、派遣元と派遣先それぞれの役割も確認が必要です。
ここで、監督署への実施結果の報告と、労働者に検査を実施する義務を混同しないようにしましょう。厚生労働省のマニュアルは、報告義務を判断する人数と受検対象者の条件を別に示しています。報告義務の人数基準で50人未満の事業場は、実施結果を監督署へ報告する必要はありません。一方、2028年4月以降はストレスチェックの実施が必要です。受検対象者が50人未満でも、報告義務の基準では50人以上になる場合があるため、人数の数え方を分けて確認してください。勤務形態が多様な職場では、対象者の判断を契約内容と勤務時間に照らして確認することが大切です。
複数の店舗で勤務する人がいる場合も、店舗ごとの勤務状況、雇用期間、週の労働時間を確かめます。委託先へ対象人数だけを伝える前に、どの事業場で誰に案内するかを確認しておくと、実施方法を検討しやすくなります。ストレスチェックは年一回の実施が基本です。最初の実施だけでなく、翌年以降も対象者の入退職や勤務時間の変更を確認できるようにしておきます。
外部に任せる場合も、会社が決めることは残る
ストレスチェックの実施には、医師や保健師など、法令で定められた資格を持つ「実施者」が必要です。小規模な事業場では、その人材を社内で確保できないこともあります。厚生労働省のマニュアルは、プライバシーを守る観点から、外部機関への委託を勧めています。ただし、委託すれば会社の準備が終わるわけではありません。対象者と実施時期を決め、従業員に制度を知らせ、社内の連絡窓口を置く必要があります。
委託先の選定では、厚生労働省が示す「サービス内容事前説明書」の様式例が参考になります。実施者の資格、検査と結果通知の方法、料金、面接指導の依頼先、情報の保存方法などを契約前に確認するためのものです。「検査一式」という料金表示だけでは、集団分析や面接指導が含まれるかは分かりません。候補先に同じ条件で説明を求め、会社に残る作業と追加費用を比べましょう。
社内で日程を調整する人と、検査結果などの健康情報を扱う人の役割は区別します。連絡担当者がいるからといって、その人が個人結果を見る必要はありません。実施者、実施事務従事者、会社の連絡担当がそれぞれ何を扱うかを、委託先と確認しておきましょう。
個人結果は、本人の同意なく会社へ渡らない
従業員にとって気になるのは、回答や結果を上司に知られないかという点でしょう。個人の検査結果は本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供されません。会社が結果を当然に受け取る前提で、運用を組み立ててはいけません。
従業員へ案内する前に、回答を誰が回収するか、結果を本人へどう通知するか、会社には何が届くかを確認します。委託先から通知の見本を示してもらえば、「結果」という言葉が個人結果を指すのか、受検状況や集団の傾向を指すのかも区別できます。紙の回答なら回収から外部機関に届くまで、ウェブ回答なら共用端末の画面や通知を他人に見られない方法も考える必要があります。
人数の少ない職場では、集団の分析結果であっても個人を推測できる場合があります。厚生労働省のマニュアルでは、分析単位の有効な受検者が10人未満なら、原則として事業者は集団分析結果の提供を受けてはいけないとされています。ここで数えるのは在籍者数ではなく、実際の有効な受検者数です。会社が職場を見直すために、個人結果を集めて代用するものでもありません。集団分析と職場環境の改善は、事業場の規模にかかわらず努力義務です。会社が分析結果を受け取れない職場でも、労働時間の偏り、業務の引き継ぎ、相談のしやすさなど、日常の仕事から改善点を探すことはできます。集団分析の扱いは、実施者と相談して決めましょう。
誰が高ストレスだったかを探ったり、本人に結果の提示を求めたりせず、相談できる窓口を知らせます。従業員が情報の流れを理解できることは、安心して受検するために欠かせません。
面接指導の申出があったとき、誰につなぐか
高ストレスと判定され、医師の面接指導が必要とされた労働者から申出があれば、事業者は面接指導を実施します。検査を委託した機関が面接指導まで引き受けるとは限りません。従業員からの申出窓口、依頼する医師、日程調整と費用を、検査前に確認しておく必要があります。
小規模事業場向けには、地域産業保健センターによる医師の面接指導などの無料支援もあります。ただし、同センターはストレスチェックの検査そのものや実施者を引き受ける窓口ではありません。検査の委託先と面接指導の依頼先を別に確保することも想定しておきましょう。利用できる支援や手続は地域の窓口で確認できます。
面接指導の申出は、個人の検査結果を会社が一律に受け取ることとは異なります。申出を受けた担当者が医師へどうつなぎ、面接後に医師の意見をどう受けて必要な措置を検討するかを決めておきます。従業員が上司に直接申し出にくい場合も考え、窓口を明確にしましょう。個人の検査結果を広く共有することとは、目的も扱う情報も異なります。
従業員への説明が、準備の仕上げになる
実施時期、受検方法、結果の通知・保存、面接指導の申出方法、情報の取扱いは、社内のルールとして定め、労働者の意見を聴いて周知します。衛生委員会の設置義務がない小規模事業場でも、働く人の意見を聴く機会を考えます。ストレスチェックの導入だけで、就業規則を必ず変更するという意味ではありません。既存の規程との関係は個別に確認が必要です。
案内では、制度の目的に加え、個人結果は誰に届くか、会社が受け取る情報は何か、面接を希望するときはどこへ申し出るかを、従業員が分かる言葉で伝えます。案内を出す日から回答期間、本人に結果が届く時期、面接指導を申し出る方法まで一続きに示せば、従業員も自分が何をすればよいか分かります。繁忙期や勤務時間の異なる拠点があるなら、全員に情報が届く方法と、落ち着いて回答できる時間を考えましょう。受検は労働者本人の義務ではありません。結果や申出を理由とする不利益な取扱いを防ぎ、安心して受けられる環境を整えることが重要です。
2028年4月の施行に向けて、事業場ごとの対象者を確認し、外部機関と会社の役割、個人情報の流れ、面接指導の依頼先を決めておきましょう。検査の手配に加えて、従業員に説明できる運用をつくることが、初めてのストレスチェックを円滑に進める土台になります。
